Agile Tour Osaka × miniPLoP 2020で、SCRUMMASTER THE BOOKの紹介とディスカッションしてきたよ
主催者の方からお誘いがあって、SCRUMMASTER THE BOOKの紹介と、それにまつわるディスカッションをしてきました。ディスカッションがよかったので、ふりかえりを兼ねてメモ。
発表資料はこちらです。
タックマンモデルで、スクラムマスターが取るべきアプローチ
タックマンモデルでは、最初の2つのフェーズである形成期・混乱期の過ごし方が大事だと言われています。
統一期・機能期にうまく入りさえすれば、チームの生産性は最大限に発揮されます。一方で、形成期・混乱期をうまく超えられないと、チームとしての成果が出せない状況に陥ってしまう可能性もあります。
上記のブログで書いた通り、スタートダッシュを切るために形成期・混乱期が大事だとは今でも思ってます。だけど、統一期も大事だよねというのを、ディスカッションしてて感じました。
形成期や混乱期(特に混乱期)は、意見の対立が起きたりで、うまくいってないことが分かりやすいんですよね。ここでは、マイナスをゼロに持っていくイメージ。ゼロに持っていく際の打ち手、対立の建設的な解消がうまくいくかは、スクラムマスターの腕次第ではあるけど。
一方、統一期はゼロかちょっとプラスを、より大きなプラスに持っていくイメージ。このフェーズでは、混乱期ほど対応しなきゃいけない課題が分かりやすいものではないので、ここから抜け出すのはチームだけでは気づきにくいのかもしれない。なので、見えないものを見ようとするスクラムマスターが、一歩引いた目で支えるのが必要なんだろうなと感じました。
スクラムマスターは、個人に着目すべきか・チーム全体に対してアプローチすべきか
参加者からの質問。自分の発表部分、スクラムマスターの心理状態モデルと関連してたので、自分も回答しました。
その場での自分の回答内容は、こんな感じ。
- スクラムは、(個人ではなく)チームの成果を重視するので
- チームの成果に近づくならば、個人に対するかチーム全体に対するかは、ケースバイケースでより適切な方を
改めて、自分がどっちのアプローチを選ぶかをもうちょっと考えたら、こんな風に動いているかな。
#スクラムマスター道において、レベル2からレベル3へ
レベル1(開発チーム)からレベル2(関係性・スクラムチーム内外)と比べて、レベル2からレベル3(システム全体・組織全体)って、ちょっと飛躍してる気はしていたんですよね。ただ、ディスカッションの中で、その辺も少し話題が出たので、ちょっとイメージがつくようになりました。
他の参加者(akipiiさん)の参加メモもありますので、興味がある方は合わせて参照ください。
forza.cocolog-nifty.com
More Effective Agileを読みました
Twitter で書評をまとめてたのを、集約するために転記。
More Effective Agile “ソフトウェアリーダー”になるための28の道標
- 作者:Steve McConnell
- 発売日: 2020/06/11
- メディア: Kindle版
次は #萌えアジャ本 を読みます https://t.co/jYOaQOMYfY
— ikikko (@ikikko) 2020年8月11日
『「検査と適応」はOODAの省略表現としてうってつけである』OODAがなにものかいまいち分かってなかったんだけど、この表現はわりとしっくりきました
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「オープンフロアオフィスにさまざまな問題があることが判明している」「生産性が最も高まるのは個室か2人部屋である」完全オープンフロアはともかく、チームがまとまって好きに使えるブースは欲しい派。ホワイトボードや共有ディスプレイ付きで。
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
『開発者とユーザーとの触れ合いと、「自律、熟達、目的」の「目的」部分との間には、強い相互作用がある。このプラクティスはプロダクトの品質という恩恵とモチベーションという恩恵の療法をもたらす』やっぱユーザーと触れ合うのは大事ですよねー
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「対面でのコミュニケーションを定期的にスケジュールする」「信頼の半減期は6週間だ」わかりやすい目安。今の状況下ではなかなか難しいかもだけど、コロナが落ち着いたらこれぐらいを目安に考えたい。一方、単に対面にしただけだとあまり効果なかったこともあるので、その辺はもうちょい仕込まないと
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「短いスプリントは実験を短期化する」「作業量は与えられた時間をすべて使い切るまで膨張するというパーキンソンの法則」短いスプリントの利点を、パーキンソンの法則に絡めると、一言で説明できてわかりやすいですね
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「スプリントのリズムに変化を持たせることは、アジャイルの持続可能なペースというスローガンを後押しする」今までは、ペースを崩さないことが持続可能であると思ってた。けど、同じペースを続けると単調になって、逆に持続可能じゃなくなる懸念があるというのは、なるほど。この辺は気付かされた
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「チーム間でのベロシテの比較はたいてい無意味なものに終わるが、意味のある比較が一つある。チーム間の生産性の向上率である」これはそうですね。絶対視するものではないけど、一つの参考情報にはなるかも。
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
わかりやすいので、画像をはらせてもらう。不確実性コーンの前半は、アジャイル的な見積りは使えないというか同じになるので、ちゃんとシーケンシャル開発での見積り手法もおさえておく pic.twitter.com/ztMHAQ1A47
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
「予測可能性が必要なときにエピックを予算として扱う」例では、あるエピックに55ptを割り当てたら、その後分解するときは55を超えないように分解していく。これはスコープと期日をいい感じに扱うための、よさげな手法っぽい
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
この本でも出てきた、遅延コスト。よさげだとは思うんだけど、うまく扱えてない。正確な値を出すより、まずはTシャツサイズ的なのでざっくり出して、考えるほうがわかりやすいかなあ
— ikikko (@ikikko) 2020年8月31日
アオアシから学ぶ、ふりかえりに大切な行動特性やマインドセット
みなさん、アオアシというサッカー漫画はご存知でしょうか?純粋に漫画としても面白いのですが、漫画の中のセリフや考え方がいちいち自分にいい意味で刺さってくるので、私が特に心に残った場面をふりかえりと絡めて紹介したいと思います。
言語化
alu.jp最初は言語化について。この場面は、それまで感覚でプレーしていた主人公が、おぼろげながらもプレー時に考えてたこと・感じたことを言語化しようとしている場面です。「いいぞ、言語化できてる」
ここで取り上げられているように、言語化することによって、自分の考えをふりかえって整理できるようになります。いいことは、再現性を高く / 改善の余地あることは、同じ失敗を繰り返さないように。逆に言うと、言語化できないうちは何でうまくいったか・いかなかったかを意識しないので、同じところから成長できない。
また、いい言語化ができるようになると、他人に考えを分かってもらう・動いてもらうのがスムーズになります。
大事なのは、だからどうするか、だ / 厳しい意見をもらいにいく
alu.jp自分的ナンバーワンワード。主人公に差をつけられたサブキャラが、差をつけられたということを認めた上で、じゃあどうするか?というのを宣言する場面です。
自分も他人と比べて凹んだり、やろうとしたことが全然できなくてで凹んだりで、よくボコボコになっています。ただ、そこで凹んだままだと成長がない。「自分はできない」を自覚した、その上で「だからどうするか」に意識を切り替えるようにしています。
で、どうするか?に対しては、厳しい意見でも率直にくれる信頼できるメンターがいると、より効果的です。メンターと話す際には、↑の言語化もセットで活きてくるでしょう。
いろんなことがいずれ考えなくてもできるようになる。そうしたら、ようやくそれが自分のものになる / 人間は考える葦である
alu.jpalu.jp
「真摯に考え続けていたら、だんだんそれが染み付いて、考えなくても自然とできるようになる。だからガンバレ」というのを、ヒロインが応援してくれる場面。なお、主人公の名前は「青井葦人」で、「人間は考える葦である」や漫画タイトルの「アオアシ」は、そこにかけているものと思われます。
サッカーに限らず、個人やチームに染み込んだ理念や行動は、いずれ考えなくてもできるようになるでしょう。KPTで言うと、最初はKeepに掲げていちいち意識しないと続けられなかったことが、だんだん当たり前になってくるイメージ。
なお、このブログは以下の記事にインスパイアされています。漫画好きなんですよね。
dev.confengine.com
next.rikunabi.com
あと、著作権を配慮した漫画のコマ引用ができるとのことだったので、一度試してみたかったのもあったのでした。
alu.jp
以上、みなさんのおすすめの漫画・セリフもぜひ聞かせてください!
フェニックスプロジェクトワークショップを体験してきました
今日、クリエーションラインさんのフェニックスプロジェクトワークショップというのがありました。それに参加してきたので、忘れないうちにメモっておこうと思います。
目的
今日の参加者は、普段とは違ってアジャイルコーチの人たちばかりで構成されてました*1。
めんどくさいアジャイルコーチな人たちはよく「自律的なチームがー」みたいに言ってるけど、その人たちが集まったときにほんとにそういう風に振る舞えるの?というのが気になってたので、この機会にいっちょ確かめてみようかというのが目的。
感想
あー、ただただ、多人数での作業の進め方に熟練した人たちばかりでやると、ここまで物事が早く進むんだなあというのを実感した場でした。いくつか例をあげると、こちら。こういうのって、別に今回のワークショップに限定した話ではないんですよね。
- 話しやすいように、ワークショップ始まって最初の第1声で「はいまずテーブル寄せようー」と会場のレイアウト変更
- 一人で抱え込んでたら情報量過多でどうにもならなくなるってのが直感的にわかってるので、まず全部共有
- ちょっとあちらこちらでわーわーいってても、「大事なことなんで聞いてくださいー」って手あげたらみんなそっちを聞く
- なんか不安要素があったら、協調作業する / 並列で進めるより一個一個確実に終わらせていく方向に自然となる
- バリューストリームに並べたほうがプロセス見えやすいよね、じゃあそう並べようと自然に
- 何か問題が起きて詰まってたら、周りの人にすぐ相談・周りもすぐに集まって助けに入る
- タイムキーパーも誰か特定の人がするのではなく、空いた人が自発的に確認して「あと〇〇分だよー」って知らせてくれる
- 会話だけで空中戦になって何を話しているかの認識が合わなくなってきたら、一回立ち止まろうと誰かが言い出して書いて見える化
- 何らかの決定時にちょっと意見がわかれても、長々と話し込まずに親指サイン*2で3秒で決を採る
- 改善のやり方がこなれている:まず現場や起こったことをふりかえって、課題をリストアップして、改善アクションを決めて、アクションを実際にシミュレーションして、その結果をフィードバックしてまた調整するループを回していって・・・
- 既存の発想にとらわれない:持ち歩いてたドットシールをカードに貼って分類の手助けにしたり、必要な紙が1枚しかないのであれば会場飛び出してコンビニにコピー取りにいくし、挙句の果てにはテーブル狭いよねじゃあ床使おうとなるし
問題もなかったわけじゃなくて、「ちょっと目の前の作業や割り込みに注力し過ぎて、大局的に見てROIが高い施策を進められてるか?」といったところは、改善の余地はありそうではありました。
ちな、自分の中での今日1のパワーワードがこちら。床は最強ですね。
壁にはりものしにくい現場はあるけど、床がない現場はない(ので、壁がなければ、床を使えばいいじゃなーい)
というわけで、開始1分でレイアウトがこうなって・・・
お昼過ぎたころにはこうじゃ
自社(自分もメンバーの一員)の中で活かすには
よくあるトラップであろう、役割のサイロ化は、文化的に多分避けられそう。
ただ、作業のやり方をこうまでうまくできる自信はない。その中でも、積極的に上であげたような振る舞いを自分で実演して、いい意味で周りをその雰囲気にのませて当たり前に思ってもらい、みんなが実践しだすように持っていくのがポイントかなと感じました。
どこかの現場を支援する立場のときに活かすには
今回僕たちがやった体験と照らし合わせて、その現場はどこがひっかかるのかを比較するのがおもしろそう。録画とってないから、完全に比較するのは難しいけど。
あとは、実際の組織構造をそのまま連れてたときに、どう変わるかは観察してみたい。今回の僕たちは、みんなロールをガン無視して進められました。けど、実際の組織に当てはめたときは、普段のロールにとらわれてて不要にサイロ化しちゃわないか、など。
ということで、クリエーションラインさんありがとうございました。みなさんも興味があったらぜひ参加してみてください!
(※:写真はフェニックスのポーズ)
*1:ぼくは別にアジャイルコーチとして動いてるわけじゃないけど、主催者にお声掛けしたときに、ちょうどアジャイルコーチで集まってやる機会があるよーとのことだったので、そのタイミングで混ぜてもらいました。
*2:親指サインはじめ、決定を早くする手法は以前まとめたので、https://backlog.com/ja/blog/3-ways-of-effective-meeting/も参照。